2016年6月20日月曜日

富山県内高等教育機関教員有志(富山学者の会)

 私たちは、昨年9月10日、「富山県内高等教育機関(大学・短大・高等専門学校)教員有志」名で、憲法違反の安全保障関連法案(以下「法案」または「安保法案」)の廃案を求める声明を発表しました。同声明では、法案が定める集団的自衛権の行使は、学説上、明白な憲法違反とされており、歴代内閣も憲法解釈上認められないとしてきたものであって、統治機関の行動は最高法規である憲法に従わなければならないという立憲主義の要請に反すること、法案では「存立危機事態」等の参戦の条件に関わる重要な判断のほとんどが時々の政府に委ねられており、専制政治に回帰しかねないことなどを指摘し、安保法案の撤回・廃案を強く訴えました。しかし、同法案は、昨年9月19日未明、数万人の人びとが夜を徹して国会周辺を取り囲み、廃案を求めて声を上げ続けている中、憲法違反との指摘にまともに答えることもなく、強行採決により可決され成立しました。それは、日本国憲法の屋台骨であり、戦後日本の国民的合意である平和国家、専守防衛の国是を葬り去ろうとする暴挙でした。
 安倍政権による憲法の蹂躙は、この安全保障関連法(以下「安保法」)の強行にとどまりません。特定秘密保護法の制定、国家安全保障会議(NSC)の設置とそこへの外交・防衛に関する権限の集中、軍事研究への大学・研究者の動員、武器輸出三原則の撤廃と武器輸出の推進、メディアに対する度重なる圧力等々、安倍政権は、歴代政権とは比べものにならない規模と速度で、日本国憲法の平和主義、民主主義、人権尊重の原理を破壊する政策・行動を進めてきました。その一方で、国民の所得格差・教育格差は拡大し、子どもの貧困率は先進国最悪レベルとなっているなど、日本国憲法が保障する生存権や教育を受ける権利は蔑ろにされています。
 この7月、私たちは参議院選挙を迎えます。憲法改正を悲願とする安倍総理大臣は、選挙を間近に控えた最近でこそ改憲については黙して語りませんが、これまで度々公言してきたように、この参議院選挙で改憲勢力が3分の2以上の議席を獲得した後は、憲法9条の改正や、総理大臣への権限集中と国民の権利制限を内容とする国家緊急事態条項の新設などを意図していることは明らかです。
 このような状況をふまえ、私たちは、新たな呼びかけ人を加え、「富山県内高等教育機関教員有志(富山学者の会)」と名称を改めて、今ふたたび、憲法違反の安保法の廃止と立憲主義の回復、そして日本国憲法の平和主義、民主主義および基本的人権尊重の理念に立った政治の実現を強く訴えることにしました。
 国会で可決・成立したとはいえ、安保法が戦争放棄の憲法原則を踏みにじる違憲の法律であることに変わりはありません。違憲の法律はあくまでも違憲であり、これを廃止することは、この国に立憲主義を回復し、平和主義・戦争放棄の憲法原則を取り戻すための必須の課題です。また、国民主権・民主主義を守り、すべての人びとの基本的人権の保障を実現するため、安倍政権による軍事国家化、秘密国家・監視国家化、国民の格差拡大の諸政策をやめさせなければなりません。
 憲法違反の政治を改め、この国の立憲主義を回復するため、私たちは、来る参議院選挙に向けて、良識あるすべての人びと、政党、政治家および立候補予定者に対して、安保法の廃止と、日本国憲法の平和主義、民主主義、基本的人権を尊重する政治の実現を目指して行動することを訴えます。また、この目標において一致できるすべての人びと、政党、政治家および立候補予定者と連帯し、目標の実現に向けて力を尽くすことを表明します。

2016年6月20日

賛同者: 68名(うち富山県内高等教育機関所属:40, 一般の方:28)
(7/7 15:00現在)

呼びかけ人(50音順)
 雨宮洋司(富山商船高専名誉教授、海運経済学)、奥村義雄(富山大学名誉教授、社会学)、後藤智(富山国際大学准教授、行政法学)、三宝政美(富山大学名誉教授、中国文学)、瀧澤弘(富山大学元学長、ドイツ文学・ドイツ語学)、中本昌年(富山大学名誉教授、哲学)、広瀬信(富山大学教授、教育学)、星野富一(富山大学名誉教授、経済学)、宮井清暢(富山大学教授、憲法学)、渡邊信(富山大学名誉教授、生物学)


ご賛同いただける方はぜひ、以下のフォームにてご署名ください。
お問い合わせは、toyamagakushanokai@gmail.comまで。